雑誌論文入門
-5年生・専攻科生向け-
沼津工業高等専門学校図書館
なぜ雑誌論文が必要なのか???
図書と雑誌はどこが違う???
情報の質の違いを意識しよう!!!
目的によって探し方を変えよう!!!
なぜ英語論文を読むのか???
書誌事項は必須事項!!!
なぜ雑誌論文が必要なのか??? 図書と雑誌はどこが違う???
4年生までは図書(ここでいう図書とはいわゆる教科書・テキストのことである)を中心に学習をしてきたことと思います。5年生または専攻科生になると卒論や研究で雑誌論文(文献)を読むことが要求されてきます。では、図書と雑誌はどこがどう違うのでしょうか。
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形態的な違い
図書:ひとつのテーマを
1冊に体系的にまとめている(シリーズものは複数冊) 図書館では分類番号順に並べられる。
雑誌:同じタイトルで定期的に発行され、各号に
vol.(巻)
no.(号)が付く。各号にはいくつかの研究論文が掲載される。ソフトカバーのものがほとんど。図書館では1年分等の単位でまとめて製本する。
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内容の違い
図書は主に教育のための情報源である。出版された時点でのスタンダードな知識、定説を解説したものであり、最新 の研究情報は盛り込まれていないのが通例である。新しい情報を盛り込むには次の改版まで待たなければならない。
雑誌は新しく生み出された研究成果を伝えるための情報源である。定期的に発行され、常に最新の研究情報が掲載される。
研究をするためには、全国または世界レベルの研究という同じ土俵の上に立たなければなりません。したがって5年生または専攻科生になり研究を始めるようになったら、図書から一歩進んで、雑誌に掲載される研究論文を読むことが必要になるわけです。
情報の質の違いを意識しよう!!!
教科書に書かれたスタンダードな情報は、昔からスタンダードであったわけでなく、「世界で初めて」だったものがいろいろなプロセスを経てのちに、その分野の定説として定着してきたと考えられます。
研究のスタートからスタンダードな知見として認められるまでのプロセスを整理すると、雑誌というものがどういう情報なのかが理解できるかと思いますので、図に示しながら説明します。ただし、これは科学分野における一般的なモデルであって全ての研究がこのとおりとは限りません。さまざまな情報の中で雑誌がどのように位置にあり、どういう性質をもっているかを理解してもらうためのものと考えてください。
(図)科学情報の生産プロセス
情報の速報性と信頼性 -
情報の「速報性」と「信頼性」は相反する傾向にある-
所属する機関内や研究室内での検討や学会発表での情報は鮮度という点では大変新しいものです。しかし、信頼性という点では未確定であり、中には学会で発表されたが、あまり評価されず論文作成まで至らないものもあります。
また、学会発表後に原著論文として完成させるケースと、学会発表論文をもって完了とするケースとがあります。
次に原著論文ですが、投稿したものが全て雑誌に掲載されるわけではなく、レフェリーシステムというハードルをクリアーしなければなりません。その雑誌のeditorや査読者が精読し、高い評価を受けた論文だけが採用されるという仕組みになっています。雑誌によってこのハードルの高低差があって、権威のある雑誌ほど査読が厳しい傾向にあります。
このようにして誤った情報はふるい落とされていきます。これに生き残った雑誌論文というのは、信頼性と速報性の両方を満たしている情報であり、研究情報として最も重要な情報源であることが理解できたかと思います。
最後に、教科書、大系書ですが、最も信頼性の高いスタンダードな情報源ですが、頻繁に改訂をすることが難しく、最新の情報が盛り込まれていないという意味で速報性には欠けるということができます。
このように大量に流通している情報も、生産されるまでのプロセスや信頼性、速報性という観点からとらえると、情報によってずいぶん「質」が違うということが分かります。この「質の違い」を意識することは大変重要です。
今はgoogleのようなサーチエンジンで様々な情報が簡単に入手できる時代ですが、ヒットした情報の「信頼性」はどうなのか「質」はどうなのか、という視点を持った上で利用することが必要です。
Review論文についてふれておきます。これからあるテーマについて研究を始めようとする人は、がむしゃらに原著論文を探し読みあさるよりも、適切なレビュー論文をひとつ探し出して読むことをお薦めします。なぜなら、Review論文はたくさんの優れた原著論文を引用しながら解説しているので、この引用論文を読むことで専門的な論文の森の中に迷い込むことなく道案内の役割をしてくれるからです。また、教科書、大系書でも原著論文を参考文献として掲載していますので、まずはこれらから初めてみるのもよいでしょう。
文献を探すときに一番身近で頼りになるのは、指導教員や先輩ではないでしょうか。一度あなたの研究テーマに合った文献について相談してみましょう。
目的によって探し方を変えよう!!!
何の目的で雑誌論文を探すのか今一度確認してみてください。
もし、これから研究を始めるために今までどんな研究が発表されているのか知りたい、なにか参考になる文献がないか、重要な文献を数十件くらい集めたいという目的ならば、適当なデータベースを選び、キーワードで検索すればある程度は満足のいく結果が得られるでしょう。前述のように、適当なReview論文を見つけるのも有効です。
一方、研究テーマが決まっていて、かつこれまでどんな研究が発表されているのかも調査済みである。自分が取り組んでいる研究が他の研究者によって既に発表されていないかどうか把握する目的の場合は徹底的な調査が必要となります。関連あるデータベースや雑誌は全て調査するのはもちろんですが、学会発表など、ありとあらゆる情報をチェックします。また、研究を論文にまとめ上げるには長い時間がかかるため、自分が執筆中に他の研究者に発表される可能性も考えて、常日頃、継続して調査しなければなりません。
なぜ英語論文を読むのか???
英語で書かれた専門的論文を読むのは面倒くさい、日本語の文献だけで済ませたい思うかもしれません。しかし、前述したとおり、研究というのは世界レベルで行われているため、言語を理由に読まないというわけにはいきません。逆に研究者というのは価値ある研究であれば英語で執筆し、英語で掲載される雑誌に投稿するというのが普通です。理工学系の研究論文の世界では英語が「公用語」であるといってもよいでしょう。
書誌事項は必須事項!!!
せっかく目的に合致した文献を探し出しても実際に現物を入手しなければ意味がありません。引用文献にリストされている文献情報やデータベース検索によって得られた文献情報には通常、著者名、論題、雑誌名、vol.、(no.)、ページ、出版年(これらを書誌事項という)が記載されています。
文献を入手するにはこれらの書誌事項が絶対に必要です。著者名や論題だけわかっていても現物にたどり着けません。また、雑誌名は略式で記載されることが多く、正式名を確認する必要もあります。
逆の立場、つまり論文執筆者になったとき、次の2点の義務があります。
@引用・参考にした文献は、その出典を明らかにすること。
Aその文献情報の記述については、読者がその文献にたどりつけるだけの充分な情報を明示すること。
つまり書誌事項の重要性を理解し、書誌事項を解読できるようになれば、自分が論文を書くときに引用文献リストを正しく書けることにも繋がります。
具体的な引用文献・参考文献欄の見方については
こちらを参照してください。